【後悔なく「自分はしっかり世に貢献できたな」と思えるように】株式会社タイミー代表取締役 小川嶺さんインタビュー

  • 2022.10.19

高校時代にビジネスコンテストに出場、複数社でのインターンを経験。大学進学後は起業家育成団体の立ち上げなどを経て、スキマバイトサービス「タイミー」を展開する株式会社タイミーを起業した小川嶺さん。
「世のため人のために働く、お客様第一の心」を忘れてはいけないと語る小川嶺さんに、自身が大切にしていることや、学生起業家として起業を目指す学生へのアドバイスをお伺いしました。

プロフィール画像

株式会社タイミー代表取締役

小川嶺(おがわ りょう)

1997年生まれ、東京都出身。高校時代からビジネスコンテストへの出場やインターンなどを経験。2016年には自身の通う立教大学で学生団体RBSA(起業家育成団体)を立ち上げ、2017年にアパレル関連事業を行う株式会社レコレを設立。1年後の2018年に事業転換を行い株式会社タイミーへ社名を変更、スキマバイトサービス「タイミー」を展開。

日本のためになれる起業家になりたい、学生起業を志すまで

―起業を志したきっかけを教えてください

高校3年生で生徒会長になり、初めてリーダシップをとることを経験しました。予算をどのような企画に当てるのか考えたり、自分の持分のお金を何かに投資してそのリターンを得たりという体験をしてみて、すごく楽しいと感じました。予算配分以外にも、文化祭の来客数をどのようにして増やすのかを考えて、実際にそれを実行したら来客数が1.5倍になったこともありました。このときは、純粋にアイデアを出したり企画したりするのが楽しいと思ったんです。

当時から日本政策金融公庫のビジコンに出場もしていて、結果は3600件くらいの応募の中で20位くらいでしたね。そのとき僕は全国生徒会連盟に所属して活動していたこともあり、絶対優勝できる自信があったのでとても悔しかったです。当たり前なことだけれど「自分より優秀な人っていっぱいいるんだ」という気づきをそこで得ました。でも、このとき優勝できず悔しい思いをしたからこそちゃんとビジネスを勉強しようという気持ちになったので、今思えば優勝しなくてよかったです。

ビジコンに参加したのが高校3年生で、その年の冬に祖父が亡くなってしまいました。祖父のことをとてもリスペクトしていたので、祖父の生い立ちなどを聞き、曽祖父が牧場を経営していたことを知って、自分には実業家の血が流れているんだと思いました。その後、牧場はなくなってしまったのですが、もう一度小川家を復活させたいなと思ったのが起業のきっかけです。ただ小川家を復活させたり、有名な起業家になるのではなく日本のためになるような起業家になりたいと思いました。

大学に入学してからはサークルにも入らず、経営学部の300人全員に会って一緒に起業する仲間になってくれそうな人を探していました。でも、全然見つからなかったんです。そこで、自分で起業家育成団体を作りました。40人くらいで小さいビジネスをしたりしましたが、社会も知らないといけないので何社かインターンを経験して、その後に起業をしました。

ー高校3年生の1年間が濃い!起業に繋がる出来事が色々重なったんですね。(近藤)

―起業して今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

2018年8月にリリースして4ヶ月しか経ってない中で、3億円を資金調達できたことは嬉しかったです。VCにはだいたい断られて、残り1ヶ月でキャッシュアウトするくらいの時期で辛かった中、藤田ファンドに選ばれたことで生き延びることができました。だからこそ、あの3億円はインパクトがあった一方で、会社としてはぎりぎりの戦いをしていたと今考えると思います。このときの調達できた理由として、世の中に必要なサービスだということをとにかく訴え続けたことがあります。実際に自分で飲食店などに話を聞きに行き、ブラックバイトや過労死など現場で起きている課題を妄想や仮説ではなくリアルに伝えることで評価を得られたと思います。

―あのときの資金調達は課題解決の熱意を伝え続けることの集大成だったんですね!(近藤)

大変なことといえば、創業期に記者会見まで用意したのにアプリリリースが間に合わなかったことですね。いろいろ投資をして30社くらい記者も呼んで会見の準備は万端だったのに、その日にアプリがリリースできず管理画面を見せて「こういうイメージです。」といった発表になりました。アプリをリリースした後もクライアントやユーザーが少なく、うまくマッチングできないことがありました。ユーザーとのマッチングができなかったクライアントへは自分達が働きに行ったりもしていましたね。それにまだネットバンキングもなかったから、ユーザーに対しての支払いは自分で朝銀行に行って手作業で振込作業をするなど、当時の起業家生活は想像と違ったけど、いま思えば青春だったと思います(笑)。

早く見つけて、早く挑んで、早く失敗する。これこそが学生起業家のメリット

―小川さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

松下幸之助先生のようになりたいと思っています。世のため人のために働く、お客様第一の心というのは一生崩れてはいけない。自分のお金儲けよりも、死んだときに「自分はしっかり世に貢献できたな」と思えるようになれるかが起業家としての第一歩目だと考えています。起業家は何段階もステップがあって、それを超えるエネルギーを持ち続けないといけません。そのエネルギーの源になるのが世のため人のためであったり、自分のやりたいことと繋がっていることが重要だと思いますね。

※松下幸之助(まつしたこうのすけ)ー1894年11月27日〜1989年4月27日。日本の実業家であり発明家で、パナソニックホールディングス(旧社名:松下電気器具製作所、松下電器製作所、松下電器産業)を一代で築き上げた経営者。

―学生起業家のメリット、デメリットはなんだと思いますか

早いうちから行動できるのはとてもいいことだと思います。人生かけて挑むビジネスを早く見つけて早く挑んで早く失敗する。失敗してもそれを振り返ることができるのは、早くから行動したからだと思います。もうひとつは、無知の知。いい意味で業界や仕組みを知らないからこそできることがあるので。どんどん挑んで自分が考えていることを形にしていくべきだと思います。

デメリットは天狗になってしまうこと。お金も集まってくると、自分がかっこいいと思っちゃうんですよね(笑)。これは過去の自分に言いたいことでもあるけど、お金のありがたみを改めて知るべきだと思います。ファッションで資金調達するのではなくて、本質で頑張っていくというのが大切ではないでしょうか。

―ここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

世のため人のために自分が何をしたいかが見つかったタイミングで起業するべきだと思うので、急いで学生起業家になる必要はないです。やりたいことが見つかった時にやればいいと思うし、今それを見つけているのであれば全力でやり切ってほしいと僕は思います。