【謙虚にして驕らず、常に学ぶ姿勢を持ち続けたい】株式会社エアークローゼットCEO天沼聰さんインタビュー

  • 2022.10.19

アイルランドで高校時代を過ごしロンドン大学に進学。卒業後は日本で社会人経験を経てから、現在CEOを務める株式会社エアークローゼットを起業した天沼聰さん。
業界未経験から日本初の月額制ファッションレンタル事業を経営するに至るまでに、どのような経験があったのでしょうか。「自分が思っている地点に到達するまでは経験を積むことや学ぶことが必要だと思う」と語る、株式会社エアークローゼットCEOの天沼聰さんにお話をお伺いしました。

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株式会社エアークローゼットCEO

天沼聰(あまぬま さとし)

1979年生まれ、千葉県出身。高校時代をアイルランドで過ごし、ロンドン大学で情報/経営を学び卒業後に日本へ帰国。帰国後コンサルティング会社にて約9年間従事。その後、楽天に入社しUI/UXに特化したWebのグローバルマネージャーを務める。「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」をビジョンに、2014年7月 株式会社エアークローゼットを設立。

35歳で起業、社会人経験を経てからの起業に至るまで。

ー起業を志したきっかけを教えてください

元々、起業じゃないとダメだと強く思っていたわけではないです。海外の大学に通っていて、インターンなどもしていなかったので学生の頃は社会人という存在を遠く感じていました。大学を卒業してロンドンから帰国したときに将来何をしようかと考え、チームスポーツや仲間と一緒に何かをするのが好きなので、もしかしたら起業という選択肢もあるかなとおぼろげながらには思っていました。同時に、社会人って何をやるのかわからないし、スキルもないし、性格上緊張しいだから社長っぽいことはできないとも思いました。

起業だとしても、会社の中でのリーダーだとしても、リーダーシップを発揮して仕事をするスタイルは自分のなりたい姿だったので、それを身につけたいと思ったのが最初です。人前でかっこよくプレゼンをしたり、プロジェクトを管理したりリードできる人になりたいと思い、その経験を得ることができる仕事を考えた結果コンサル会社に就職しました。その後、10年近くコンサルファームで仕事をして、その間に起業しようという思いが強くなりました

 働いている中で、チームで仕事をするのが楽しいと実感し、自分達が本当に大事だと思うことをチームで進めていくという起業をしてみようと思いました。それもあり、エアクロの創業メンバーは私含め3人ですが全員コンサル時代のチームの仲間です。

コンサル時代に起業しようとは思ったものの、この時すぐには起業せず一度転職しました。起業した後のことを考えて、0→1はできたとしても1→100にするなど実業家として会社を大きくしていくのに必要な経験が足りないと思ったからです。具体的には3つあって、グローバルな経験を得ること、多種多様な人と仕事をすること、組織づくりを学ぶこと。これらを学びたいなと思いました。そう思っていた時に偶然にも楽天の求人があることを知り、転職しました。3年くらい楽天で色々なことを経験した後に35歳で起業しました

感染症の拡大からよぎる「サービスが悪になるかもしれない」という不安

ー起業してから今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

大変だったことはコロナですね。経営者としてもすごく考えさせられたし、事業としても苦戦しました。事業としては、ファッション業界には大打撃でしたね。外出しないからおしゃれをする機会が減る、そうするとお洋服を買うことが少なくなる、という感じでコロナの1〜2年で市場が十数%下がったんですよ。これって結構あり得ないことで、業界にとってのダメージが大きかったですね。

経営者としては、未知の感染症が拡大している中でお洋服のシェアリングというビジネスを継続していくことが本当にお客様のためなのか?ということにとても悩みました。もしシェアをすることによって感染症の拡大に繋がってしまったら、本質であるお客さまの幸せや感動体験のための事業とは逆のことが起きてしまいます。サービスがお客様にとって悪になるかもしれないというのは今まで一度も考えたことがなかったので、事業をどうしていくべきかの部分も含めて意思決定することが多くなりました

印象に残っている出来事は、サービスをつくって最初の資金調達をEOの仲間でもある寺田倉庫さんからしたことです。サービスのことを考え、倉庫会社さんとお仕事をしたいと思ってさまざまな会社に当たっていましたが、ひたすら断られていました。返却されてくる想定がなかったり、個品を管理することができなかったり、倉庫会社さんのシステム的に一緒にやるのが難しいのはわかっていました。そんな中、寺田倉庫さんは「一緒に業務フローから考えていこう」と言ってくださいました。初めは業務委託の予定でしたが、会長さんと社長さんに興味を持っていただき「会ってみたい」とおっしゃってくださいました。社長さんと会長さんとのランチでサービスと世界観に共感してもらうことができました。その時に、「サービスが回り始めて、世の中やお客さまの反応を見るのに1年間でかかる費用をうちが全部出すから、作りたい世界を見せてくれ」と言われたことをよく覚えています。

―めちゃくちゃかっこいいですね(近藤)

そうですよね。本気でサービスを作りたいと思っていて、サービスができた時の世の中に対する熱量と貢献したい心に対して、ちゃんと応援してくれる人がいるのだということを実感しました

絶対的な正しさは存在しないから常に学ぶ姿勢を持つことが必要

ー天沼さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

これは、僕が個人的に大切にしていることですが、時間を完全燃焼させたいということ。時間というのは、すべての人が平等に持っているもの。だからこそ、個人によってその瞬間の価値を変えることができるものだと僕は思っているので、すべての時間を自分が最高だと思える時間にしたいと考えています。

経営者としては、「謙虚にして驕らず」が一番だと思います。僕はすべての人がメンターだと思っています。これは海外経験から強く感じたことですが、すべての人が価値観も違えばバックグラウンドも違う。だからこそ、主観で見たらすべての人の考え方も価値観も正しいじゃないですか。そう考えると、絶対的な正しさっていうのはないですよね。正しさがない以上は自分自身が「この方がいいだろう」と思う正しさを晒し続けることが必要だと思います。そう考えると、これは素敵だなと思ったものは常に取り入れるようにしないと自分の成長が限られてしまう。人ベースで考えるのではなくて、どんな人からも学ぶことができるから、いつも学ぶ姿勢が必要だと思っています。だから、できる限り学びの機会を増やすというのは大事なんじゃないかと思います。

ー学生起業家のメリット、デメリットはどんなところだと思いますか

メリットは経験できる年数が多いことです。経営者としての年数が長いことは自分の立場から見ても羨ましいなと思います。早くから始めることでたくさん経験を積めるのと、最初のサービスでミスに対して過保護になりすぎなくていいのはとても強いと思います。例えば、私のように35歳で起業するとして、そこから数年または数十年試行錯誤するとなると人生上少し遅くなってしまいますから。そう考えると、なんでもできる時間の強さは羨ましく感じます。

一方で、組織作りとか社会人としてのノウハウがあまりないことはデメリットだと思います。メールのコミュニケーション、先輩との関わり方、営業についてなど社会人としての経験があるからこそわかることやできることもあると私自身実感しているのでそこはデメリットになってしまうかなと思います。

ーここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

僕は、自分が自信を持つまでインターンやスタートアップで先に経験を得ることをおすすめします。「何歳までに」とかの期限を決めたり、時間で考えたりするのではなくて、自分の状態で起業を決めるのがいいと思います。僕自身、自分が思っている地点に到達するまでは経験を積むことや学ぶことが必要だと思うタイプなので。それが学生のうちにできているなら学生から起業するべきだし、時間がかかるなら社会人になってもいいと僕は思います。

―なるほど!なりたい状態を先にあげて解像度を高めていくというのは確かにいいですね!(近藤)