【スタートアップとは、当たり前のことを当たり前じゃないやり方で解決するもの】ガイアックス スタートアップスタジオ責任者佐々木喜徳さんインタビュー

  • 2022.10.19

組み込み系ベンチャーやコンシューマ向けインターネット関連業務などを経て、フリーランスエンジニアとして独立し、現在は日本国内のスタートアップの普及を目指すスタートアップスタジオの責任者を努める佐々木喜徳さん。
起業家を目指す若手の支援を積極的に行う佐々木さんが考えるスタートアップとは。スタートアップ起業家に必要なことはなんでしょうか。スタートアップスタジオ責任者の佐々木喜徳さんにお話を伺いました。

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ガイアックス スタートアップスタジオ責任者

佐々木喜徳(ささき よしのり)

組み込み系ベンチャーやコンシューマ向けインターネット関連業務を経験し、フリーランスエンジニアとして独立。 その後、フィールドエンジニアリング会社の役員を経て2007年にガイアックスに参画。スタートアップスタジオ責任者として起業家への事業開発支援や投資判断を担当。2022年にスタートアップスタジオ協会を立ち上げ、スタートアップ挑戦者の裾野を広げる社会活動に取り組んでいる。

フリーランスからガイアックスへ、そしてスタートアップスタジオの責任者に

ーガイアックスでのキャリアの経歴を教えてください

 ガイアックスには2007年ごろにエンジニアとして入社しました。当時ガイアックスは上場したばかりで、これから自社サービスをどんどんやっていこうというタイミングでした。その時のガイアックスのメイン事業はクライアント向けのSNS構築と運用の受託事業だったので、そこでインフラの構築や保守などエンジニアとしての業務をした後に、社内スタートアップ事業の挑戦を経てスタートアップスタジオの責任者に就任しました。

ー フリーランスからガイアックスへ、入社を決めた理由はなんですか。

 フリーランスの時は本当にフラフラしていました(笑)。ときには零細企業の役員になって会社を立て直したり、小さな芸能関係の会社の立ち上げメンバーとして活動したり、興味だけで生きていました。ガイアックスは学歴の強い人たちが入るイメージだったのに対し、僕はほとんど学歴がなくて。当時の派遣会社の担当の人に「多分、佐々木さんとガイアックス、合うからいってみれば?」と言われて面談に行き、まずはエンジニアの派遣社員としてガイアックスに潜り込みました。その時に「なんでもやらせてもらえそう」というのを感じました。僕はなんでも自分からやりたいタイプなので、そこで面白そうと思ったのが決め手ですね。

ー当時から自由な社風だったんですね!(近藤)

 はい。実際入社して思ったのは、とにかくサークルっぽい!僕はその時25歳くらいだったのですが、ガイアックスの社員は20代後半の若い層がメインで、同世代が多いこともあり、会社自体のノリに仕事感があまりなかったです。

ーそのノリとか雰囲気ってどこから感じたんですか?(近藤)

 最初に任されたプロジェクトが、社長と僕ともう1人の社員の3人で社内のCRMを改善するというものでした。上場企業の社長が、エンジニアの僕と一緒に解決方法や何を実装しようか、というのを普通にディスカッションしているってめちゃくちゃ面白いじゃん!と思ったことですかね。

※CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客と良好な関係性を築き、継続していくための施策やそれを実現するツールやシステムのこと。

ーいい意味でめちゃくちゃフラットだったんですね!(近藤)

「教えてあげているというより、共同創業者」として向き合う

ー   佐々木さんの思うスタートアップスタジオのいいところはどんなところですか

 スタートアップスタジオというのは、どうやって事業化していいかわからないアイデア段階のものを僕たちがリソースもお金も使って支援していくというものです。プレシリーズAとかシリーズAで、VCやCVCなど外部の投資家から資金調達ができる状態になるまで支援することに取り組んでいます。

 スタートアップスタジオの特徴は、実際に僕たちがリソースをかけて支援することです。例えばいいアイデアになるまでに事業検証が必要であれば、検証費用を出してあげる。いい事業アイデアに辿り着いたら法人の登記もしてあげるし、投資もします。会社を経営するために必要な経理や財務などの管理部機能も支援し、プロダクト開発が必要であれば無償でMVP開発もやっています。

ーお〜!教育機関に近いかんじですかね?(近藤)

 まさにやっていることは起業家教育ですね(笑)。事実、起業家を育てているけれど、僕たちのスタンスとしては「教えてあげているというよりも共同創業者」という感じです。全員が起業にたどり着くわけではないし、バリューアップするというのはもちろん難しいと思っています。ただ、挑戦する土壌が大事だと思っていて、「たくさん失敗するためにスタートアップスタジオを使っている」という考え方で挑戦したほうがいいんじゃないかと思っています。つまり、なるべく早くたくさん失敗して成功する事業にたどり着くための支援というのが僕たちのやっていることですね。

圧倒的な行動力で大人や社会を巻き込む力が大事

ー   ​​佐々木さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」は何だと思いますか。

 いくつかあると思いますが、1つ極端な言い方をすると、「ちょっと頭おかしいかどうか」(笑)。当たり前を当たり前にやってもスタートアップじゃないなと思っていて、当たり前のことを当たり前じゃないやり方で解決するのがスタートアップ。一般常識から逸脱した考えができるかどうかというのは重要だなと思っています。

ー固定概念がないってことですね!(近藤)

 そうそう。表現方法はいろいろあるけれど、僕が好きな表現でいうと「ネジが外れている」「リミッターが壊れている」という感じ。あとは、圧倒的に行動力が必要。スタートアップは一次情報からいかにして事業を作るかが全てだと思うので、その一次情報を集めるのに行動力や行動量が必要だと思いますね。

ー実際に佐々木さんが支援をしたいと思う人や事業はどのような人や物ですか

 人のコミュニケーションや人の繋がりを作る場、人の繋がりから課題を解決しよう的な事業アイデアが大好きですね。だから、こういう事業アイデアを聞くとよだれが出ちゃう(笑)。

ー起業を目指す若手の支援をしていますが、支援をする中で心がけていることや思いなどありますか

 教えるコンテンツやフィードバックが本物かどうかというのはかなり意識しています。学ぶためとかじゃなくて、それが本当に事業アイデアを考えるプロセスなのか。何が良くて何が悪いのかの判断は、事業がうまくいくかどうかを基準にフィードバックすることを意識しています。起業ゼミでは中高生に教えたりもしているので、ついてこられなくなる子が出てくるときもあります。その際は、ついてこられない子のケアを学校の先生に実施いただきつつ、僕たちはついてくる子たちに本気で本物のフィードバックを続けるように努めています。

ー良いコンテンツのためにフラットに接するということですね。(近藤)

ー起業している学生にアドバイスや何か一言ありますか

 学生起業家は、固定概念がなくて柔軟な発想があるのが最大のメリットです。逆にアセットがないのがデメリット。でもそれはトレードオフだと思っていて、その持ってないアセットをどう補完するかが重要じゃないですかね。そして、補完するためには、いかに大人や社会を巻き込めるかという巻き込み力が重要だと思います。大人側としては、学生起業家を応援したいと思っている人はたくさんいるから、臆せずにどんどん接触していって巻き込んでいってほしいですね。

ーここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

 学生かどうかよりも、早いか遅いかの話だと思います。起業とか事業作りは経験の積み重ねによって成功確度が上がっていくはず。なぜなら、学びがあるから。そこから考えると、「起業したいな」の段階で出来るだけ早く挑戦したほうがいいと思います。そうすれば早く失敗して、早く学ぶことができるから成功確率の高い事業に挑戦できる打席が増える。つまり、学生だからというよりも早く挑戦した方が成功確率は上がると思います。あとは、学生だと失敗しやすいしダメージが少ないんじゃないかな。

ーたしかに。結婚したり、家庭を持ったりするとリスクのことを考えないといけないですもんね。(近藤)

 はい。結果、学生起業はメリットしかないと僕は思います。